家族葬のしかたとマナー

■ 家族葬とは
家族葬とは、身内や親族などごく内輪だけで行う葬儀をさします。家族葬という言葉は新語で、以前は密葬と呼ばれていた葬儀の形式の内容がこれに最も近いものだそうです。
ここでは家族葬と密葬の違いや家族葬の内容と流れ、香典や弔電を送る際のマナー、挨拶状・通知状などについて説明します。

 1.家族葬とは?(家族葬と密葬の違い)

家族葬とは、身内や親族などごく内輪だけで行う葬儀をさします。もともとは密葬という言葉がありましたが、新しい言葉として家族葬という言葉が定着して来ました。元来、密葬の場合には別途、本葬が行われることが多いようですが、家族葬の場合にはこれのみで完結します。

[なぜ家族葬?]
  一説によると、高齢化に伴い、職場を引退してから死亡するまでの期間が長くなるにつれて、葬儀への職場関係者・会社関係者による参列が減り、家族や近親者のみの葬儀が増えてきたことが一因とされているようです。また、ご高齢者の中には高齢者施設などで亡くなる方も増え、訃報を通知する相手も少なくなり、自然に内輪だけのごくシンプルな葬儀すなわち家族葬となるケースも多くなっているようです。

[家族葬のマナー]
 身内だけで故人とのお別れをするための儀式が家族葬です。儀式の進行や席順をはじめ、葬儀の際の喪主の挨拶や弔辞などについても柔軟に考えて、各自が故人に対してお別れの挨拶をするようなつもりで行うのが良いでしょう。
  どちらかと言えば、しきたりやマナーにとらわれず、故人が好きだった音楽を流したり、家族全員でアルバムの写真を見ながら故人を偲んだり…大切な人との別れの時間を、できるだけ故人の遺志にそった形で行うのがベストだと思います。

[密葬はどんな時に行われる?]
(1)密葬とは別に大規模な社葬や偲ぶ会などの本葬が別途行われるような場合。

(2)年末年始の時期に(例えば12/30〜1/7など。葬儀を遠慮する期間は地方によって異なります。火葬場も休みになることがほとんどです。)亡くなった場合には密葬を行います。別途本葬を行うこともできます。

(3)旅先や遠方で亡くなった場合には、一度荼毘に付してから(荼毘に付す=「だびにふす」。火葬にすること)、持ち帰ります。

(4)自殺など、死亡理由を公にしたくない時にも密葬が行われます。

[家族葬の通知は?]
 身内だけで故人とのお別れをするための儀式が家族葬ですので、いつ、どこでどのような形で家族葬を行うのかを家族間で通知する場合には電話での連絡となります。
  但し、故人とおつきあいがあった方や故人がお世話になった方には、「故人が死亡したこと」、「亡くなった日時」、「家族葬で済ませること」などを伝えます。必要があれば「香典は辞退したい」といった旨を伝えることもあります。
最近では葬儀まですべて済ませたあとで、故人がお世話になった方々に書状でお知らせする事も多くなってきています。 家族以外の人に、いつ・どのようにして知らせるのかは遺族で相談して決めます。

◆家族葬と密葬の違い
出席・参列する人 (どこまでの親族を呼ぶ?・どこまで参列?)
家族葬 密葬
家族葬は亡くなった人の家族・身内や親族のみで行われるほか、場合によってはごく親しくしていた人も出席・参列をすることがあります。

[家族葬に出席・参列する人]
A.故人と同居の家族のみ
B.故人の近親者のみ(同居・別居にかかわらず二親等くらいまで)
C.故人の家族および親族のみ
D.故人の家族、親族および、故人とごく親しくしていた人のみ
密葬の場合は亡くなった人の家族・身内や親族などが中心となります。

[密葬に出席・参列する人]
A.故人と同居の家族のみ
B.故人の近親者のみ(同居・別居にかかわらず二親等くらいまで)
C.故人の家族および親族のみ
家族葬と密葬の主な形式の違い
家族葬 密葬
家族葬は、原則としてそれだけで完結します。

※ ごくまれにですが、後日改めて親しかった人を招いて「偲ぶ会」「お別れ会」などを開くこともあります。
密葬を行う場合は、そのあと本葬を行うのが一般的です。
まず密葬は身内だけで葬儀を行い火葬まで済ませます。そのあと本葬を日を改めて行います。
とりわけ社葬などを行う場合には、遺族だけで密葬を済ませたのちに会場を変えて会社関係者による本葬を行います。
また、社葬に限らず密葬のあと行う葬儀は本葬という呼称ではなく「偲ぶ会」「お別れ会」という形での葬儀も増えています。

 2.家族葬のしかた(引き出物、お供え。お返し)と、
  家族葬の費用

 家族葬をお考えの方のために、代表的な家族葬の内容をご紹介します。下記は一般 例です。地域によっても異なります。実際に家族葬をされる場合には、葬儀社などに細かい見積を取ってみてください。

家族葬の内容
◆家族葬で実施される内容
内容 補足説明
葬儀・告別式
  ・(ご遺族・近親者のみで密やかに通夜を済ませたのち)納棺を済ませ、葬儀・告別式を行います。
ごくシンプルに済ませるタイプの家族葬では、葬儀のみを行いお通夜の法要は行われないこともあります(お通夜は下記オプション欄で選択)。

・通夜を行わない場合には、僧侶による読経も告別式だけに行われることになります。
火葬
  ・葬儀・告別式のあと、火葬場にて火葬します。
・通夜も葬儀も行わず、火葬のみを行うケースもあるようです。こうした式を「火葬式」と呼びます。
◆オプションとして実施される(ケースバイケースで選ばれる)内容
内容 補足説明
通夜・通夜式
  ・ごくシンプルな家族葬の場合には、お通夜を行わないこともあります。 オプションでお通夜を行うかどうかを選びます。

・通夜を行わない場合には、僧侶による読経も告別式だけに行われることになります。
初七日
  ・遠方から集まる親族のために、初七日の法要も告別式に続いて行われるケースが増えてきています。
ただし、家族葬では初七日の法要は省略されることもあります。
会食
  ・自宅や斎場もしくはお寺などで弁当や料理を手配するほか、会場となる場所を移して故人を偲ぶ会食を行うことがあります。
・葬儀社の一般的な家族葬のプランには、食事代は含まれないものがほとんどです。

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◆その他
内容 補足説明
お供え
  ・祭壇へのお供え物(果 物など)については、喪家・施主の希望によりつけることになります。
・参列者がお供物を出すこともあります。
供花
  ・祭壇を飾る飾花および供花・生花は、喪主・喪家もしくは参列者が出すことになります。
引き出物
  ・参列者・出席者に対して、お礼の気持ちを込めてお渡しする引き出物(返礼品、会葬返礼品などとも言います)も、家族葬の際には別 料金となります。
家族で良く話し合って必要かどうかを決めます。
香典返し
  ・お香典を頂いた相手に対し、四十九日の法要の後にお礼としてお渡しする品物をさします。

・本来の葬儀葬式のマナーとは異なるものの、四十九日を待たずに葬儀の当日にお返しをする例も多くなってきているようです(こうしたしきたりは、地方によります) 。このようなお返しのしかたを「即日返し」などと言います。
 例えば東京では、当日はハンカチ程度の品を一旦返礼品としてお渡しし、後日、四十九日の頃に改めて香典返しを送るのが主流です。しかし地方では、通 夜または葬儀に参列して頂いた弔問客に、その場で返礼品をお渡しする例も多いようです。
(改めて品物を送る手間や費用が省けるといった理由から、こうしたやり方が選択されることもあります)

 ちなみに、事務局周辺の福岡県の一部の地域では「当日返し」と呼ばれることもあります。調べたところ、この呼び方は静岡県・千葉県などでも使われているようです。

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コラム:新生活運動について
 群馬県や埼玉県などの一部の地域では、「新生活運動」という冠婚葬祭簡素化運動が実施されています。
 もともとは戦後に始まった、冠婚葬祭だけでなく古くからの慣習や華美な生活を見直そうという運動から来ていますが、高度経済成長に伴い次第に廃れて来ました。現在でも一部の地域にのみ残っており、香典の上限額が決められていたり、香典返しをしないなどの取り決めがあります。
 
◆家族葬の費用について
最近は、家族だけで行う家族葬が以前よりも増えて来ています。都会などで近隣とのおつき合いが疎遠になったことや、核家族化が進んだこと、高齢化が進んだこと、家族だけで静かに見送りたいというご家族が増えてきたこと、特に宗教にこだわらないという方が増えてきたこと、お年寄りが高齢者福祉施設等で亡くなるケースなども徐々に増えてきていることなどが理由としてあげられます。

実際に家族葬にかかる費用は20万円程度から、葬儀の内容に含まれるものによって金額が変わります。
きちんと見積をしてくれる業者も増えてきているようです。
下記は静岡県で調査した家族葬の費用の一例です。

(1)通夜・告別式なし。家族だけで静かに故人とお別れをします。20万円程度
   お別れ、納棺、火葬などに必要な一式が含まれ、僧侶などに支払う謝礼は別料金
(2)通夜なし。告別式あり。30〜40万円程度
   お別れ、納棺、葬儀、火葬などに必要な一式が含まれ、僧侶などに支払う謝礼は別料金
  また、会葬者に返礼品をつける場合や、会食をする場合は別料金
(3)通夜あり。告別式あり。50万円程度
   通夜、納棺、葬儀、火葬などに必要な一式が含まれ、僧侶などに支払う謝礼は別料金
  また、会葬者に返礼品をつける場合や、会食をする場合は別料金
 

 3.家族葬の香典の金額相場, 香典のしの書き方, 香典の出し方

家族葬は新しいタイプの葬儀のかたちです。慣習にとらわれない反面、むしろ故人とゆかりの深い人たちだけで行う、密度の濃い葬儀だと言えます。ここでは香典について解説します。

家族葬の香典について
◆家族葬に香典を持参するの?
1.家族葬に参列(葬儀もしくは通夜)する間柄の人は?
  ・葬儀の案内を受けた場合には、香典を持参します。むしろ出席者は故人とゆかりが深い人ばかりなので、金額も比較的多めとなります。
2.家族葬に(葬儀もしくは通夜)に参列しない間柄の人は?
  ・身内だけで行うのが家族葬です。葬儀の案内がなかった人は、基本的には香典は不要です。どうしても何か贈りたいという場合には、遺族の負担にならないような金額の範囲にとどめるべきでしょう。
 
※弔電について
 家族葬で済ませたいという連絡を受けた場合、出席しない間柄の人でも弔電は送ることができます。家族だけで故人を静かに見送りたいと言う遺族に対し、特に断わりがなかった場合には弔電を送ることは失礼にはあたりません。
もともと、弔電には通夜や葬儀に駆け付けることができない場合に、遺族に対するお悔やみを伝えるという役割があります。
 

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◆家族葬に香典を持参する香典ののしの書き方は?
 [表書き]
・仏教の場合の熨斗の表書きは「御霊前」「御香料」などです。表書きが印刷されているものを使っても失礼にはあたりません。
中でも最も一般的なのは「御霊前」で、この表書きは通夜・葬儀だけでなく四十九日(忌明け)より前の法要でも用いられます。

[のし袋の選び方と水引き]
・黒白または双銀の水引き
・水引きは結び切りまたはあわじ結び(あわび結びとは、結び切りよりも結び目が豪華でアワビのような形になったもの。あわび結びとも言います)
・蓮(はす)の花の絵がついているものは、仏教専用です。

[墨]
・薄墨を用います。薄墨は悲しみの涙で文字が滲んでいるという気持ちを表わすとされています。
御霊前という表書きは、仏教だけでなく宗教がわからない時に使えます。
・仏教の場合、通夜、葬儀、初七日は「御霊前」(墨は薄墨)、四十九日以降の法事・法要は「御仏前」です。

・中央に会葬者の氏名をフルネームで書きます。

※詳しい書き方は「香典の書き方」のページへ。キリスト教や神道の場合なども紹介しています。>>>

※なお、浄土真宗では「御霊前」は使えません。代わりに「御仏前」「御香料」「御香典」などを用います。但し、急な訃報で喪家の宗教を確認できない場合などは「御霊前」でも許されるという考え方が一般的です。
◆家族葬に香典を持参する香典の金額は?
  ・下記に紹介するのは家族葬の場合の香典の金額の相場です。香典とは別に供花や御供物をお供えすることもあります。家族葬の案内を受けたこと自体が故人とゆかりが深いという意味になります。
・会食の有無によって金額が異なります。会食がある場合には食事代を考慮した金額を持参します。
・香典には急な出費に対する相互扶助の意味もありますので、葬儀に参列する場合には必ず持参します。ただし、家族葬自体が無駄を排したシンプルなかたちのものなので、各自の経済状態に応じた金額で良いでしょう。

※下記は相場として金額を掲載しています。実際には、4万円という数字は縁起が悪いとされ(「死」を連想することから)使用されることはありません。連名で香典を包む際の一人あたりの金額としてはアリです(例えば5人兄弟で@4万円×5人=20万円など)。

家族葬 通夜・葬儀の香典の金額の相場

あなたとの関係
(故人は
あなたの○○)

贈り手のあなたの年代とお香典相場

20代

30代

40代〜

祖父母
(祖父・祖母)
20,000〜30,000 20,000〜40,000 30,000〜50,000
両親
(父・母)
40,000〜100,000 50,000〜100,000 50,000〜100,000
兄弟・姉妹 30,000〜50,000

50,000

50,000

20,000〜50,000 20,000〜50,000 20,000〜100,000
親戚・親族 10,000〜20,000 20,000〜30,000 20,000〜50,000
親しい友人 10,000〜20,000 20,000〜30,000 20,000〜30,000

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 4.家族葬の場合の通知のしかたと弔問
  (ご近所、町内会、隣組)

家族葬を行う場合のご近所への知らせ方(通知のしかた)と、弔問のしかたについて解説します。
※地域によって異なります。下記は一例です

◆家族葬の場合の通知のしかた
家族葬を行う場合には、ご近所や隣組へも回覧板、連絡網などで知らせます。

[通知する内容]
・故人の氏名、喪主、亡くなった日
・葬儀は近親者のみで行うこと
・以下の要望があれば通知に明記します。
 ①香典・お供物等は辞退したい
 ②会葬・弔問等は辞退したい

[例文・文例]
・誠に勝手ではございますが、通夜・葬儀告別式は近親者のみでとり行いますのでご会葬、弔問等はご遠慮頂きますようお願い申し上げます。
・誠に勝手ながら、 御香典、御供花等のお心遣いを賜ります事は故人の遺志により固く辞退させて頂きたくお願い申し上げます。
◆家族葬の場合の会葬のしかた
※地域によって異なります。下記は一例です。
家族葬を行われた場合でも、回覧板や通知などに「会葬や香典を辞退する」といった内容が書かれていなければ原則としては弔問やご焼香などに伺っても構わないはずですが、「家族葬」には身内だけでひっそりと故人を見送りたいという遺族の思いも含まれていることがあります。

もし上記のような「会葬・香典辞退」の記載がなく、家族葬を行っているご遺族に対して会葬や弔問をしたい時には、遺族に対する配慮が必要です。先方が会葬や御香典を辞退したいと考えている場合もあるからです。できれば回覧板を管理している町内会に問い合わせをするか、親しい間柄であれば遺族に電話で確認をしてから伺うようにします。
香典、供花等も同様に確認をしてから準備します。
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